~初めて評価会社で欠損金控除にあたったので整理しました~
はじめに
今回は、中会社の株価算定において、欠損金控除をどのように扱うのかを調べる機会がありました。今まで評価対象会社で欠損金控除を行うケースがなかったため、自身の備忘も兼ねて、ブログにまとめておきます。
中会社の株価算定の基本
評価対象会社が「中会社」に該当する場合、株価は原則として、以下の2方式を併用して算定します。
- 純資産価額方式
- 類似業種比準価額方式
両方式で求めた株価に所定の割合を乗じて加重平均し、最終的な株価を算出します(財産評価基本通達187)。
今回のテーマ:欠損金控除の取り扱いについて
今回注目したのは、類似業種比準価額方式における課税所得の計算に際し、欠損金控除が存在する場合の取り扱いです。
✅ 結論: 欠損金控除は「なかったもの」として扱い、課税所得を算定するのが原則です。
評価上の該当箇所と調整内容
評価明細書(第4表)において、直前2期の課税所得を基に「利益金額」を計算します。この利益は、将来の経常的な収益力を評価する目的があります。
そのため、次のような非経常的項目は調整対象となります:
- 固定資産の売却益
- 補助金収入
- 受取配当金の益金不算入部分
一時的・偶発的な利益は継続的な収益とは異なるため、除外することで実態に即した株価を算定します。
欠損金控除が除外される理由
類似業種比準価額方式は企業の将来の経常収益力を評価するため、過去の欠損による一時的な赤字で評価が過度に下がるのを防ぐ目的があります。
根拠となる法令・通達
- 財産評価基本通達186-2:「評価会社が継続的に相当の収益を上げると仮定した場合の…金額として計算する」
- 国税庁 質疑応答事例:「欠損金があるときは、そのマイナスの金額は零として取り扱う」
補足:受取配当金の調整とその背景
受取配当金も本業の経常収益とは異なるため調整対象です。これは法人税法第23条(益金不算入)の趣旨にも関連します。
法人税法上の取り扱い
法人税上は、過去の欠損金は課税所得から控除可能です(法人税法第57条)。
ただし株価評価とは目的が異なるため、取り扱いに差が生じます。
まとめ
- 類似業種比準価額方式では、欠損金控除は考慮されません。
- 非経常的な収益(売却益、補助金等)も調整対象です。
- 受取配当金は本業収益ではないため調整します。
参考条文・通達一覧
- 相続税法第22条(財産の評価)
- 財産評価基本通達185(著しい欠損会社)
- 財産評価基本通達186-2(利益金額等の算定基準)
- 財産評価基本通達187(中会社の評価方式)
- 国税庁 質疑応答事例「利益金額の意義」
- 法人税法第23条(益金不算入)
- 法人税法第57条(欠損金の繰越控除)
免責事項
本記事は、筆者が税務を学ぶ中での調査・知見を整理したものであり、特定の税務判断やアドバイスを目的としたものではありません。
正確な対応が求められる場合には、必ず税理士や専門家にご相談ください。法令や通達の解釈には変更があり得る点にもご留意ください。
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